10/17/2012

「THE LINE」8th Oct, 3rd Night “Talk & Live Performance”「能 宇宙と繋がるとき」- Report

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三日目のイベントは、重要無形文化財総合指定保持者の「宇高通成」先生を演者にお迎えしての”能舞ワークショプ”。 

秋の早い日没は、天王寺を闇に包み 夜風はひんやり肌に冷たく、私達組員は芝生の上に座り、緊張して先生をお待ちしました。 先生の関西なまり軽妙な話術で、たちまち私達の緊張はほぐれました。 

パイプのコレクションを先代の師匠から譲り受けたけれど、」ここ一週間は禁煙している話や、少年の頃のおそらく血のにじむような修行の話も、先生にかかるとひたむきに挑戦する少年のキラキラした瞳を彷彿とさせるようで、ほほえましいような印象さえ持ちました。 

先生に続いて謡の一節を全員で読み、それはあたかも読経のように夜空に響き渡り、次第に能の世界に導かれて行く感覚でした。 

シテ方唯一の‘能面作家“でもいらっしゃる先生は、自らお打ちになったお面をこともなげに“どなたかつけてみませんか?”(関西なまり)「エーッ、いいのー!」
ボランティアのご婦人は、ある組員の母上で面を通しての視野の狭さを実感され、「外がほとんど見えないので自分の内面に集中出来る気がします」と述べられました。

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能舞台での観客の視線は“面”一点に集中し、演者は“面”によって遮断された世界で意識はただひたすら自己の内的世界に向かいながら舞うのでしょう。

“面”はその場のすべての気を吸い取り、哀しさ、怒り、喜び、優しさなど、人間の想いを微細な動きで表し「静の中の動」「無の中の有」と言うのか、これこそ今や世界語ともなり、日本が誇れる“わび”“さび”の世界なんだなと納得し。数百年に渡って受け継がれてきた伝統の緻密で厳しい過程のすごさを、改めて示された感がありました。
“面“が顔に張り付いてとれなくなった男の話をふっと思いだし“面”の持つ力に魅了された夜でした。

最終章は、天遊さんの“書”のパフォーマンス。
まさに始まろうとしたその時、先生が「では私は、羽衣を」とおっしやいました。それは全く予期せぬ申し出でした。
天遊さんが座して静かに気を整えている背後から、端然と居住まいを正された先生の朗々とした“羽衣”があたかも天女に羽衣をまとわせ、天空を舞わせるがごとく思いやりに満ちて優しく響き、その響きの中で 天遊さんの“書“が舞いました。
まるで天女のように。

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あの夜の感動は忘れ得ぬものとして深く私の心に刻まれました。宇高先生は言うに及ばず、あの場所を共有してくださった皆様に深く感謝申し上げます。

本堂奥の阿弥陀如来が、私達人間の営みを静かに見守っておられるようで有りました。
阿弥陀様―宇高先生―天遊さんー観客の皆様―そして私達組員が 一つの“LINE”で結ばれたひとときとなりました。

このような時間と場が可能になったのは、ひとえに天王寺さんのご厚意よるものであり、深く深く感謝申し上げます。ありがとうございました。


Posted by Sachiko

 

 

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